日本安全運転・医療研究会

自動車運転再開とリハビリテーションに関する研究会

 産業医科大学リハビリテーション医学講座では,1990年に脳卒中後片麻痺で半側空間無視を呈した入院患者のリハビリテーションを実施し,自宅退院後に自動車運転を再開して自損事故を生じた苦い経験が契機となり,脳障害者の自動車運転再開の問題に取り組むことにしました[1].1996年に「自動車運転適性と技術評価プログラム」を作成しましたが,外傷性脳損傷者の自損事故を防止することはできませんでした.そこで2006年に事故常習者の指導システムであるKM式安全運転助言検査(松永勝也)を一部改変して簡易的な自動車運転シミュレーターとして導入し,2009年に高次脳機能障害者を対象とする簡易自動車運転シミュレーター(SiDS)を開発し,臨床使用を開始しました.

一方,厚生労働省は2001年に高次脳機能障害支援研究班(班長:中島八十一)を設置して支援モデル事業を開始し,2006年からは全国規模に拡大して支援事業が行われるようになりました.産業医科大学病院はモデル事業,その後は支援事業の支援拠点機関として高次脳機能障害リハビリテーションに取り組む中で,患者や家族から自動車運転再開の相談が急増する状況となりました.2013年4月に「高次脳機能障害者の自動車運転再開認定基準の策定」が日本損害保険協会自賠責運用益拠出事業に採択され,「高次脳機能障害者の自動車運転再開とリハビリテーション」に関する研究班を組織しました.この研究班の事業の一環として3年間,北九州国際会議場で「自動車運転再開とリハビリテーションに関する研究会」を開催することにしました[2].

  1. 蜂須賀研二,他:高次脳機能障害と自動車運転.認知神経科学 2007;9:269-273
  2. 蜂須賀研二(編著):高次脳機能障害者の自動車運転再開とリハビリテーション<1>.蜂須賀研二,金芳堂,京都,2014

研究会組織(2015年11月時点)

顧問国立リハビリテーションセンター・学院長 中島八十一
会長門司メディカルセンター・院長 蜂須賀研二(2016年4月より顧問)
副会長産業医科大学リハビリテーション医学・教授 佐伯 覚(2016年4月より会長)
九州大学・名誉教授 松永勝也
世話人産業医科大学リハビリテーション医学・助教 加藤徳明
産業医科大学知的財産本部・講師 橋本正浩
産業医科大学若松病院・診療教授 岡ア哲也
産業医科大学若松病院・リハビリテーション部・主任 飯田真也
九州産業大学情報科学部・教授 合志和晃,助手 林政樹
福井総合病院リハビリテーション科・部長 小林康孝
目白大学保健医療学部・准教授 藤田佳男
富山県高志リハビリテーション病院リハビリテーション科・医長 吉野修
井野辺病院総合リハビリテーション部・課長 加藤貴志
北海道千歳リハビリテーション学院 山田恭平
横浜市総合リハビリテーションセンター機能訓練課 西則彦
千葉県千葉リハビリテーションセンターリハビリテーション療養部・科長 小倉由紀
事務局産業医科大学リハビリテーション医学講座 幹事:加藤徳明,飯田真也

研究会事業

 研究会の組織は,国立障害者リハビリテーションセンター・学院長中島八十一(厚生労働省科学研究費研究班班長)を顧問とし,産業医科大学リハビリテーション医学・教授(当時)蜂須賀研二を会長,産業医科大学病院診療教授佐伯覚(現リハビリテーション医学教授)・九州大学・名誉教授松永勝也を副会長,リハビリテーション科医師,作業療法士,工学者ら14名を世話人としました.2013〜2015年の間、年1回,研究会を開催し,自動車運転再開システム,自動車運転再開の基準案,自動車運転再開に関するリハビリテーションなどの情報発信や討論を行いました.参加者は毎回450〜550名であり,職種は医師,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,臨床心理士,教習所指導員,行政・公安委員会担当者,その他の専門家でした.この研究会はリハビリテーション関係者に,自動車運転に関する診断や評価,訓練や助言,そして医療・自動車教習所・公安委員会関係者との連携の重要性を啓発し,大きなインパクを与えました.2016年以降は合同研究会の開催や研究会の統合を目指します.

文責:日本安全運転医療学会 更新日:2017年10月3日

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